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ブノアの聖母Oil on wood, transferred canvas, 49.5 × 31cm St Petersburg Hermitage
この絵はレオナルドがヴェロッキオ工房から独立して最初に手がけた作品となります。おそらくはレオナルドの残したメモにある「1478年、二枚の聖母子画を始める」の記述にある聖母子画の一つではないかと言われています。 絵の大きさは縦が約50センチ程度なので、教会に飾る祭壇画というよりは個人で所有することを目的に描かれた作品の可能性が高いでしょう。ただ、この絵に関する正確な記録が存在していないため、この絵がどのような経緯で誰のために制作されるようになったのかは全くの不明です。それどころか現在でこそレオナルドの真筆と一般的には認められている作品ですが、実際には確かな来歴など存在していないので厳密的には「断定」といったところで、レオナルド作品ではない可能性すらあります。 しかし、この作品にはその他のレオナルド作とされている多くの真贋不明の作品とは大きく異なり、繊細で格調の高いレオナルド特有の作風が随所に見受けられます。そのためこの作品をレオナルド作とする判断には多くの専門家、研究家が賛同しており、反対派の意見は皆無に近い状態です。 私もこの作品はレオナルドの真筆に間違いないと感じます。 特に幼児キリストの描写には後の岩窟の聖母に描かれた幼児キリストやヨハネの描き方に酷似しており、レオナルドでなければ描けない品格が漂っています。 ルネッサンス期には多くの宗教絵画が描かれたのですが、こういった幼児キリストの描写には奇怪でグロテスクなものが多く醜悪な感じすらするものが数多く見受けられるのですが、レオナルドの描く幼児は端正で愛らしく、品格も備わっている点が大きく異なります。 このように幼児キリストの描写に関してはレオナルド作として問題はないのですが、聖母マリアの表情に関しては違和感を感じる部分があります。 特に口を開いて微笑む聖母の表情には疑問を感じます。レオナルドの場合、こういった口を開いて微笑むといった作品例が他になく、レオナルド自身の手でこの部分を描いた可能性はかなり低いのではないかと思います。おそらく他の研究者も指摘しているようにこの部分には他の画家による修正が加えられている可能性が高いでしょう。 ただ、それ以外の部分にはレオナルド的な特徴があふれており、疑問に感じる部分はありません。 単純そうに見えながら複雑に体をよじる幼児イエスのポーズ、膝に幼児を抱く聖母マリアのポーズ、腰周辺でまくれた衣服とそれに続く膝までの描写、胸のブローチの真珠の装飾、肩から胸元ブローチまでのデザイン、そういったすべての要素はレオナルド作品でしばしば登場する定番の描写なのです。
Hermitage Museum, 38 Palace Embankment, Dvortsovy Municipal Okrug , Cental District, Saint Petersburg Opening Hours
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